リスクの低い老後の運用はあるのか

 

あるのなら私も知りたいんだが

私は老いた身でリスク資産抱える不安に晒されたくないのです。

なので基本的には老後の運用には消極的なのですが、それでもやるだろうし

同じように考えている人がいるでしょうから何かしらの手を考えたい。

 

老後の運用についての優等生的な知見は巷に溢れているので、日頃半身で市場に

参加している臆病者としての知恵を絞りたいと思います。

 

そのままではリスク過大になっている

老後は、残された運用期間は短く、運用資産は若い頃より増えているでしょうから

シンプルに考えてリスクが増大しています。

引退時にオールキャッシュにして、そこからまた積み立てを始めるなんて律儀な

人以外は、BUY&HOLDのままではリスクを取り過ぎになる可能性が高いです。

NISAが恒久化・枠拡大されて更にそういった傾向が強まりそうです。

 

たまに「含み益が充分乗っているから暴落が来てもへっちゃらだぜ」みたいなこと

を言う人を見かけますが、市場が20%下落したら、益が乗っていようがいまいが

保有資産はきっちり20%減です。

投資は、含み益の状態を維持するゲームではないので、資産総額で考えなければ

意味がありません。

 

想定利回り5%で毎月5万円、20年間積立投資すると2000万円以上になるのですが

そこへ30%暴落が来て600万吹き飛んで平気でいられますかわたしはむりです。

5×12×20で元本だけで1200万ですから、20年で得た利益800万の内の8割方

が吹き飛んだも同然になるわけです。

 

アセットアロケーションだの、効率的フロンティアだの言われても

ヘッジのための分散がヘッジになってないとか、不確実性を積み増してるだけ

じゃないかと思うことがままあります。

しかしまあ、巷に溢れるあの手のアイデアは、普遍性を持たせなきゃいけないので

仕方ないのでしょうが、概して「BUY&HOLD前提、使えるツールは投資信託のみ」

みたいなやつで、そのような縛りを設けることに無難さ以上のものを見出せない人間

にとっては、喩えるなら「ユニクロ縛りの最強コーデ」といった趣きの何かにしか

見えなかったりします。

 

投資と言うと、長期買い持ちか、短期間で売買を繰り返すかみたいな二極化された

イメージで捉えられがちな感がありますが、手間やコストをかけずにもう少し攻めた

手法を編み出したいですね。

 

運用期間10年で確実に利益を出す方法を探してみる

本当にそんなものがあるのか?

ということで、前回 長期の平均線(年利6.65%)と、今の株価との乖離ってやつ

を手掛かりに投資のタイミングを図る、という手法を試してみました。

 

finance.yahoo.com

 

こちらから1932年から2022年までの「Weekly」のデータを拝借して

週ごとに、平均線からどれぐらい乖離している状態で買ったかと、その520週間後

(≒10年後)に株価がどうなったかを調べてみました。

 

積立ではなく、一括投資です

・配当金や為替は考慮していません

・10年後の株価との比較をする都合上、2012年までに購入した分の追跡調査

 しか出来ません。

 

以下が結果。

 

(データ総数 4229 乖離率:最大123 最小-52 平均-1.9)

乖離率      520週後の増減率
平均値 中央値 最大値 最小値
100%以上 -26.15% -24.56% -13.86% -45.07%
75%~100% 0.02% -2.88% 31.10% -35.78%
50%~75% 20.52% 10.47% 78.72% -16.61%
40~50% 33.84% 23.59% 85.19% -13.73%
30~40% 52.07% 58.95% 93.14% -12.42%
20~30% 49.06% 62.16% 108.75% -24.77%
10~20% 51.07% 53.28% 191.16% -10.87%
0~10% 97.09% 97.81% 310.69% -4.66%
-10~0% 119.02% 124.27% 342.42% -8.61%
-20~-10% 167.53% 173.68% 386.76% 11.32%
-30~-20% 156.75% 175.29% 313.97% 25.85%
-40~-30% 168.77% 177.32% 293.11% 32.07%
-40%以下 205.35% 197.91% 319.17% 72.84%

 

「乖離率」というのが上で述べたように、買付時の株価と平均線とがどれだけ

離れているかの度合のことです。

平均より上振れたところで買うほど、その後の利益率は悪くなるという当たり前の

結果になりました。

 

ドットコムバブルの所為か、大分数字が上に寄ってる印象ですね。

50%以上乖離したところで買っても、最大で78.72%利益が出てたりしますが、そんな

のはバブルの頃だけで異常値です。

バブルと言えばドットコムみたいに言われていますが、一旦平均まで下がった後

持ち直した(2004~2008年*)辺りも結構なバブルだったりするんですよね。

その後のリーマンショックは起きるべくして起きた調整のようにも見えます。

 

* 上記の50%以上乖離したところで買って78.72%利益もこの辺りですが、その後の2009年に

  元本割れしています。10年で勝ったからと言って更に長期で勝てるわけではありません。

  やはり高値掴みはしないに越したことではありません。

 

 

投資に絶対はありませんが、これを見る限り投資期間10年あれば、平均より

-10%以下で買うことで、元本割れリスクをかなり抑えられそうです。

(更に細かく見ると、乖離率-5%以下で買えば、最小値でもプラスになるようです。)

 

しかし、平均以下になるタイミングが10年に一度ぐらいしかないというのが

ネックです。更に、ここ20年は割高感が強いです。

近年がバブル傾向にあるのか、100年近く前と今を同じ尺度で測ることにそもそも

無理があるのか分かりませんが。

 

保守的な運用だからこそ機を見ることが大事だと思います。

なんにせよ、機械的に積み立てをしてきて、リバランスも碌にやったことがない

というような運のみで引退時を株高で迎えられた人は、運が良いうちに一度勝ち逃げ

した方が良いのではないでしょうか。

「暴落は覚悟している」と闇雲に市場に資産を晒すより、暴落が来て割安な水準

まで下がってから乗れば良いと思います。

 

「暴落が来たら」ではなく「割安な水準まで下がったら」というのがミソです。

巷では「暴落は買い場だ!」みたいに煽るインフルエンサーがいますが

「暴落=買い場」とは必ずしも言えません。そもそも暴落の基準も不明です。

 

暴落は買い場というのなら、暴騰は売り場もセットで。

相場は振り子のようなところがあって、買い一辺倒ではなかなか上手くいかない

ようです。