暴落の有無に関係なく長期的には常に買い場ですが
下落相場が続くと「買い場だ」といった声を見掛ける機会が増えます。
過日、「暴落=買い場」とは限らないという話をしたのでその補足的記事を
ということで、本当に買い場と言えるほどの暴落の水準を、その後のリターンとの
相関から模索してみたいと思います。
検証に用いた株価は1932年1月から2022年12月のものです。
配当、為替は考慮しません。
下落率から探る
まずS&P500のWeeklyのデータを用いて、前週比の下落率と、n年後の株価の増減率の
こんな感じに
* 1年を52週で計算しています
結果
1年後 | 3年後 | 5年後 | 10年後 | 20年後 | |
下落時のみ | -0.1546 | -0.0796 | -0.0451 | 0.0199 | -0.0201 |
全データ | 0.0027 | -0.0134 | -0.0164 | -0.0116 | -0.0300 |
前週と比べて下落した時のデータだけを集計したものが上、下は上昇下落問わず
週ごとの株価データの総体です。
下落率は負の数なので、n年後の増減率がプラスである、つまり相関係数が-1に
近いほど良好な結果ということになります。
とすると、相関らしい相関はほぼないということになります。
同様に、Monthlyのデータを用いて調べます。
1年後 | 3年後 | 5年後 | 10年後 | 20年後 | |
下落時のみ | -0.1971 | -0.1420 | -0.0991 | 0.0401 | -0.0282 |
全データ | -0.0061 | -0.0366 | -0.0443 | -0.0264 | -0.0624 |
やはり、望ましい相関は見られません。
例えば、20年後のデータで前月比でマイナスの月は358回
15%以上マイナスになった月は6回あり最大下落幅は-25%です。
「下落時のみ」の20年後の増減率の平均は373%、前月比で15%以上マイナスに
なった場合の増減率の平均は417%です。
前月比の騰落率と、10年後の利益率の関係をグラフにすると以下のようになります。
一応、下落幅に比例して将来のリターンは向上しているようです。
ですが、更に20年後の利益率の関係をグラフにすると
ほとんどリターンに差がなくなってしまいます。
平均との乖離率から探る
また例の平均線を利用して、同じ要領で買付時の平均との乖離率と、その後の
リターンとの相関を調べます。
結果
* Weeklyデータを使用
1年後 | 3年後 | 5年後 | 10年後 | 20年後 | |
マイナス値のみ | -0.119 | -0.232 | -0.227 | -0.288 | -0.755 |
全データ | -0.253 | -0.376 | -0.477 | -0.635 | -0.668 |
今度は割と強めに出ました。
乖離率がマイナスの時だけ集めると相関が弱まるのは、恐らく平均より上振れた
位置で高値掴みすると後のリターンが悪くなるデータのインパクトの方が強いせい
だと思います。
ちなみに、「マイナス値のみ」の20年後の増減率の平均は472%
更に乖離率がマイナス10%以超の場合に限ると増減率の平均は535%になりました。
とりあえず、下落率だけ見て判断するよりは有用かと思います。
これもグラフにしてみると
で、それで投資が上手くいくの?
まあ、多少は・・・。
シラーPER なんかもそうですが、あくまで割高かどうかを見るものでしかなく
割高に買われるのにも、それを正当化するだけの何かしらの理由があるので
その背景などファンダメンタルズも交えて総合的に判断しないと、売買の
タイミングを図る用途としては上手く機能しないと思います。
前にも述べた通り、高値掴みを排除するのにはいくらか有用だとは思います。
ランダム・ウォーク理論にしても「相場の予測は不可能」みたいなフレーズは
何度も繰り返されていますが、予測などしないでも相場の過熱感に合わせて
ポジションを調整するだけで優位に立ち回ることは難くないと思います。